庭のみかんの樹や営利目的で植えてあるみかんの葉が元気がなくなり枝の勢いもなくなる。
梅雨明けなどの時期に葉の萎れが見られたり秋には早めに落葉したりするとまず根の異常を疑う必要があります。
みかんの根の厄介な病気にあげられるのが、白紋羽病です。土のなかでの病気の進行は当初地上部には現れず地上部に異変が出た場合は手遅れとなる場合が多く枯死にいたります。
白紋羽病菌は土壌伝染をしますので、1本のミカンの根に発生すると隣に植えてあるみかんの樹に次々に伝染し有効な対策を行わないとみかん園全体に被害が広がります。
発見が遅くなり手遅れの状態で薬剤処理を行ってもいい結果につながりません。
早期に発見し適切な処理をすればみかんの樹勢の回復も可能ですし隣の樹への伝染も防ぐことができます。
今回は、みかんの樹の白紋羽病の初期の状態から樹を元気にさせることと隣の樹への土壌伝染を防ぐ方法を紹介します。
こちらのミカン園は園主が白紋羽病の進行に気がつかずかなりの枯死したみかんの樹がありました。
今回はとりあえず枯死するミカンの樹を少なくしようとの目的で行いました。
白紋羽病の対策資材として施用したのは、有用微生物で製造した機能性堆肥の資材と同じく有用土壌微生物液体資材です。
以前にびわや栗のかなり悪化した白紋羽病の対策としてこれから説明する方法でびわや栗の樹が元気に回復した事例が複数あります。
この方法は有機農業で使われる手法で、総合防除対策になります。
①植物の根を元気にする
②根のゆりかごである土を根の成長に適するように改善する、
③土壌微生物同士の拮抗作用で白紋羽病の菌を抑え込む
では、みかんの白紋羽病の有用微生物資材での総合防除のあらましから説明しますね。
みかんの白紋羽病による樹の衰弱から有用微生物の活用で元気をとりもどす方法
①ミカンの白紋羽病株を見つける
みかんの白紋羽病にかかっている株をできるだけ早期に見つけることが大切です。
②みかんの白紋羽病と判断するには根の調査が必要です。
みかんの白紋羽病と判断するには,根を掘り出して白紋羽病の白い菌糸を確認する作業が必要です。
③みかんの白紋羽病株の根を除去する。
病気が確認できれば、菌糸に侵されている根を切断し取り除く。
③みかんの樹の枝が伸びている外周部分を幅50cm深さ30cmくらいで堀り溝を作る
④溝の部分に有用微生物由来機能性堆肥を散布する
みかんの白紋羽病株の根の回復と白紋羽病菌の土壌伝染防止のために有用微生機能性堆肥を溝に全面散布をします。その後土を埋め戻します。
⑤みかんの白紋羽病株の周りに有用微生物液を灌注器で灌注します。
まず帯状に穴を掘り有用微生物機能性堆肥を散布した箇所から始めて内側の樹のまわりにも灌注します。
これから作業の細かい部分を説明していきます。
みかんの白紋羽病株の特定
白紋羽病とは
白紋羽病は樹木,庭木、果樹に発生する病気です。樹木の根の部分で繁殖し放置すると樹木や果樹を枯死させる病気です。
枯れた樹木などを餌にして生存する菌を腐生菌で白紋羽病菌は腐生菌の仲間になります
白紋羽病菌は土壌の浅い部分で繁殖します。特に剪定した枝を地面に埋めたり未熟の堆肥を施したりすると白紋羽病の発生の原因になります。
白紋羽病を見つけるにはまず地上部を観察
新芽を出す時期に勢いよく展開しなかったり出てきた葉が少し小振りになったりします。
症状が進行して根の機能が損なわれると地上部では葉が萎れ気味になります。
みかんの場合は病気の進行に伴い果実の肥大が悪く果実も小さいものが多くなります。
このような状況がでてくるとまずみかんの樹の根本や地表部の根の地際部分を良くみるようにします。
地際部や樹の根元に白紋羽病の白色の菌糸がみられたら白紋羽病だということがわかります。
白紋羽病株の発見が遅くなると根の大部分が被害を受け回復することは難しくなります。
上の写真は栽培されている方が紋羽病に気がつかなくて放置したため枝の一部が枯死しています。
ミカンの白紋羽病被害株の根の調査
白紋羽病と思われる兆候が地上部に発見できたら根の状況を確認します。
まずは幹の地際部を少し土をどけて確認します。白い菌糸が発見できれば白紋羽病はかなり進行しています。
地際部に発見できない場合はもう少し掘り進めて地表か深くない場所の根に菌糸がついてないか確認します。
特に根の先端部分は、白紋羽病の菌糸がついていると樹が急速に弱ってくるので良く確認します。
上の画像はミカンの太い根の上に白紋羽病菌の菌糸がみられる典型的な症例です。
みかんの白紋羽病株の根の除去
みかんの樹の掘り上げた根に白い菌糸が確認できたら、幹に近い太い根や細い根をすべて切り取り除去します。
切り取った根はビニール袋に入れ園の外へだします。
根を除去したあとの土壌には、白紋羽病の菌糸が残っているので白紋羽病菌への対策が必要です。
対策には農薬を使用する方法もありますが、今回紹介するのは土壌有用微生物を利用した総合防除対策になります。
総合防除対策の概要は次のようになります。
①土壌有用微生物による白紋羽病菌の抑制
②土壌用微生物による土壌の団粒化(ほくほくの土にする)
③土壌有用微生物によるみかんの根の発根促進
土壌有用微生物によるみかんの白紋羽病対策がいい点は、白紋羽病菌を抑制しながら
土壌のほくほく度を改良しさらに弱ったビみかんの根の発根を促すことができることにあります。
土壌有用微生物資材による白紋羽病対策
土壌有用微生物資材
みかんの白紋羽病対策資材
①土壌有用微生物機能性堆肥
土の中の有害菌に対して拮抗的に働く放線菌やバチルルス菌を多く含む堆肥を使用します。
色々な土壌有用微生物を多く含む堆肥は白紋羽病菌を抑制する他に土壌をホクホクにします。
②土壌有用微生物活性液
放線菌やバチルス菌などの好気性の有用菌を水で培養した製剤です。
みかんの白紋羽病対策にはこの2つの資材を使用します。
みかんの白モンパ病被害株の周りに帯状に穴を掘る
みかんの白紋羽病対策でまずやることは白紋羽病菌を他の場所に広げないことです。
被害株の伸びた枝の外周に帯状に溝を掘ります。
溝の幅は50cmで深さは30cmくらいです。
帯状の溝に有用微生物機能性堆肥をたっぷりと散布する
ミカンの樹の周りに掘った溝に機能性堆肥をたっぷり散布します。
機性堆肥を散布する目的は、上の写真のように健全な根を白紋羽病菌から保護し更に根の活力を高め樹の勢いを回復させることにあります。
ミカンの樹の周りの溝に散布がおわりましたら土を被せ埋め戻します。
みかんの白紋羽病被害株の周りに土壌有用微生物活性液を灌注する
白紋羽病に拮抗性を示す放線菌群や土壌の団粒化を促進する有用微生物菌群を含んだ有用微生物菌群をタンクで500倍濃度に希釈しする
上の画像は灌注器です。専門農家が使用する器具ですが土のなかに液肥を送り込んだり土壌病害の薬剤を土中に送り込む道具です。
今回はミカンの樹の周りに溝を掘り有用微生物機能性堆肥を散布した後に溝を中心に有用微生物菌液を灌注します。
灌注の深さは30cmくらいで灌注した液が地表に吹き出すまで行います。
灌注する幅は約50cmで円周を周りながら行います。
円周上が終了したら円周内部の場所にも灌注をおこないます。
なお、有用微生物菌液の灌注は10日置きにあと2回、都合3回おこないます。
まとめ
今回、ミカンの白紋羽病の対策を行った園の白紋羽病発病の原因はミカン園に埋め込んだ桑畑の桑の木を土中に埋めたことでした。
土中で腐りかけた桑の木に白紋羽菌が増殖したということです。
その上に温州ミカンの苗を植え成木になり埋めていた桑の木の残渣の所までミカンの根が到達し発病したと推定されました。
次々とミカンの樹が枯れていき放置すれば全滅しかねない状況でした。
今回は有用微生物の力を利用してミカンの白紋羽病の進行を総合防除の考えかたで止める方法を紹介いたしました。